

混沌と対立が渦巻く無情の世界に虹色に響き渡るのは、天衣無縫なる無常の美しき旋律──。儚いほど美しく、孤高なまでに唯一無比な世界観を持つ、アイスランドの芸術的至宝であるポスト・ロック・バンド、シガー・ロス。その彼らが2013年5月の『KVEIKUR(クウェイカー)』以来、約10年振りとなる新作スタジオ・アルバムをリリース。この数年は、ライヴや過去作品のアニヴァーサリー・エディションや再発、ミックステープの発表などを行っていた彼ら。本最新作は、2018年にドラマーのオーリー・ディラソが脱退し、2012年にバンドを脱退したマルチ・インストゥルメンタリストのキャータン・スヴヴィーンソンが復帰してから初めての作品でもある。
その最新作『ATTA』は、バンドのセルフ・プロデュースとなるアルバムであり、アイスランドはレイキャヴィックのSundlaugin Studioでレコーディングされ、ストリングス部分はロンドンの歴史的なスタジオ、アビー・ロード・スタジオで録音が行われた。「このアルバムはシガー・ロスのアルバムに聞こえるが、以前より内向的になっていると思う。ストリングスの音はとても広がりがあるが、外よりも内に向いたサウンドだ」そう語るのはフロントマンのヨンシーである。しかしシガー・ロスのカルト的なファンを惹きつけるのは、そのような内面的な内省である。彼らの星を見つめるような天空のサウンドと、アイスランド語のヴォーカルとヴォンレンスカ(彼らの独自の言葉)の混合は、最も原始的な方法でリスナーの心と魂を直接結びつけるのだ。「こうしていると、いつも各アルバムが最後になるかもしれないと話すんだ」ヨンシーはさらに付け加える。「私たちはいつも気候変動、ドゥーム・スクロール、地獄行きについていつも考えているんだ。このアルバムを作るとき、世界は少し暗い感じがした。でも、もしかしたら希望があるかもしれない。闇があれば、光があるんだ」
format:LP
label:BMG
release:2023
track list:
01. Glóð
02. Blóðberg
03. Skel
04. Klettur
05. Mór
06. Andrá
07. Gold
08. Ylur
09. Fall
10. 8