

足元はおぼつかず、時に立ち止まりながら、それでも着実に前へ歩み続けたOvlovの3rdアルバム。文句なしの傑作だろう。
Dinosaur Jr.やSebadohと比較されながら、インディー・ロック・シーンでカルト的に崇められてきたOvlov。ただ、フロントマンSteveはいつもその熱狂にある種冷ややかだったかもしれない。幾度となく活動を休止し、時にはSNSで「君たちはファンとは言えないし、僕のことを何も知りやしない」、「Ovlovはもう良い。弟がPet Foxというバンドを始めたからそちらを聴いて欲しい」とこぼすなど、社会に対して明らかな拒絶反応を示すことも多々あった。だが、そんな歩みの先にあった本作では一定の解決が試みられているように見受けられる。
デビュー期から存在しながらもここまで録音されてこなかった「Cheer Up, Chihiro!」の変容ぶりにも乗り越えようとする姿が現れているのかもしれない。同曲ではRingo DeathstarrのAlex Gehringがバック・ヴォーカルをとっている。
また、間奏ではHartlett兄弟の父で、現役のミュージシャンであるTedがアルト・サックスのソロを披露している。インタビューによるとある晩「Cheer Up, Chihiro!」を録り終えた直後、ガレージのドアが開けて父親が帰って来たそう。町のギグでサックスを吹いて来たと見て、ソロを頼むとワンテイクで吹き切ったのだとか。
LP-EIS-110C3
format:LP
label:Exploding In Sound
release:2024/02 *reissue
track list:
1. Baby Shea
2. Eat More
3. Land of Steve-O
4. The Wishing Well
5. Strokes
6. Cheer Up, Chihiro!
7. Moron pt. 2
8. Feel The Pain